フェルナンド・フローレス 「行動のための会話」の先にあるもの

フェルナンド・フローレスは、1943年1月9日にチリの小都市タルカで生まれた。

1970年、27歳のときにサルバドール・アジェンデ社会主義政権に加わり、国有企業長官、通商大臣、財務大臣などを歴任した。しかし、1973年に軍が起こしたクーデターにより政治犯として投獄された。

1976年、国際的な人権救援団体アムネスティ・インターナショナルの尽力により、家族とともにアメリカ合衆国カリフォルニア州パロアルトに亡命した。ここで、スタンフォード大学計算機科学学科の研究員として働き、著名な人工知能学者であるテリー・ウィノグラードと共同研究を開始した。

1977年、カリフォルニア大学バークレー校に移り、1979年にヒューバート・ドレイファスとジョン・サールの指導の元に哲学の博士号を取得した。

ここで紹介する「行動のための会話」は、スタンフォード大学時代から約10年間続いたウィノグラードとの共同研究の成果を、1986年に発表したものである。ここでは、Language/Action Perspective(LAP)という新しいシステムデザイン論を展開し、コンピュータは人間を代行する人工知能(Artificial Intelligence)ではなく、人間の思考を支援する道具(Intelligence Amplifier)であると主張している。

その後、フローレスはLAPを実際のビジネスに適用して、経営コンサルティング会社Business Design Associates、ソフトウェア開発会社Action Technologiesなどの企業を立ち上げた。これらのビジネスを通して行なったLAP応用研究の成果として、1997年に「新たな世界の開示」を発表し、2001年に「信頼の構築」を発表した。

以下、チリからカリフォルニアに亡命して再びチリに帰国するまでの25年間のフローレスの経歴を追いながら、「行動のための会話」「新たな世界の開示」「信頼の構築」という3つの研究を解説する。

 

1.行動のための会話

 

 

2.新たな世界の開示

 

 

3.信頼の構築